統合失調症の妄想癖その7
翌早朝、信長の隣で竹刀を振り、汗を流すのび助の姿があった。
「しっかり腰も入っている。悪ぅないぞ」
信長に褒められて、のび助にますます気合いが入った。
昼過ぎに横浜を出て、のび助は地元へと向かった。
会社が大変な時に同窓会なんて、馬鹿げているかもしれない。
しかし今ののび助には、何となく必要に感じた。
ー俺、少しずつ強くなってる気がするー
電車に揺られながら、のび助はそう思っていた。
ーもっと強くなりたいー
現代に単身来てしまった信長を思った。
ー強くなりたいー
夜、同窓会が開催された。
懐かしい面々を見て、のび助はしずを思い出していた。
スネ吉がのび助に話しかけた。
スネ吉は父親の会社を手伝っており、ブランド物の洋服で固めていた。
「どうだい花屋は」
のび助は正直に
「今火の車で大変だよ」
と答えると、スネ吉は急に声を大きくして
「やっぱりな。しずちゃんが亡くなったら、お前はそんなもんだろ」
と右口角を上げた。
静かに飲んでいるのび助の隣に、出来須木が座った。
出来須木は昔から優等生で、現在は弁護士をしていた
。 集まってくる独身女性達を押し退けて、のび助の隣に来たのだ。
「出来須木君は以前検察官になりたいって言ってたのに、何故弁護士になったの?」
のび助の問いに
「僕はね、法律を勉強しながら思ったんだ。正しい事を主張したら、有利に決まってる。 けど犯罪人側に付いて、一個の人権を守る事をするのも大切かもしれないって」
と俯く出来須木に、のび助は頷いた後
「群れから逸れた子羊をこそ、救うべき羊だと言う。出来須木君らしいね」
と聖書の一節を出した。
無論出来須木もその一節を知っている。
統合失調症の妄想癖その8
出来須木は頭を下げて
「のび助君なら僕を肯定してくれると思ったよ。ありがとう。犯罪人の側に付くのを、 否定する人も沢山居るんだ」
それから出来須木はずっとのび助の隣を離れなかった。
ジャイマンがマイクを持った・・・。
「さあ宴もたけなわだ!そろそろ俺様の歌と洒落込むぞ!」
全員が一斉にジャイマンを真顔で見た。
ぴーーーーーっ!
ここから放送禁止部分突入の為、ざっと割愛する。
帰宅してからののび助は、金策に走りながら役所や大手建設会社に提出する書類の作成を始めた。
同時に各店舗に回って、従業員達の在り方の指導、教育にもより力を入れた。
銀行からの融資も決まり、出来た計画書を各々の所へ持参して力説した。
徐々に計画書は実現化していった。
とある小川では、両岸に紫陽花を植え込み、大柄で色とりどりの紫陽花の咲くその小川は、町の 観光名所のひとつとなった。
ある公園ではチューリップ・アネモネ・ガーベラ・ポピー・ナデシコをアーティスティックに 植え込み、4月に一気に咲き誇るプランとし、その町の名物となった。
あるショッピングモールでは、観葉植物と花を駆使して彩られ、定期的に変更する方針を取り、 いつでも買い物客で賑わう美しい大繁盛の建物となった。
増田もその頃には逮捕されたが、のび助は
「相手にしている暇はないので、警察にお任せします」
と、忙しい日々を送った。
しずの話していた大きな夢 ー街を花でデザインして、通る人を幸せにしたいー に近付いていた。
のび助の勢いは止まらなかった。
花の研究施設を立ち上げ、品種改良を重ね、各地の売り上げに悩んでいた農家救済を旗印に、 大きく農家からも信頼を得た。
農家救済は東南アジアに広がり、その地域も幅を広げて行った。
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