昔々、あるところに桃太郎という若者がおりました。彼は犬、猿、キジという、心強い家来たちとともに、鬼退治の旅に出ることを決意しました。しかし、誰も知らない秘密の家来が一人いました。それは、なんと手足があり、言葉を話せる世にも珍しい玉蜀黍だったのです。
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表向きは家来として迎えられた玉蜀黍でしたが、実は桃太郎たちにとっては、非常食として連れて行かれたのです。皮肉にも、彼は他の家来たちと同じように、鬼ヶ島への冒険ができると胸を躍らせていました。
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旅の途中、とうとう玉蜀黍は料理されてしまいます。
茹でられ、蒸され、焼かれ……そしてしまいには、出汁を取られ、芯まできっちりと使われてしまうのでした。
玉蜀黍は、冒険して感動を分かち合うことすら許されず、星となったのです。
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鬼ヶ島に到着した桃太郎たちは、鬼との激しい戦いに挑みます。その戦いの最中、桃太郎は鬼の親分に刀をへし折られ、絶体絶命の状況に陥ってしまいます。
「ええい! これでもくらえッ!!」
桃太郎は自棄になって、出汁を取られてもろもろになった玉蜀黍の亡骸(芯)を掴み、鬼の頭をその芯で殴りました。
「うぎゃーッ、い、痛ぇ!」「ひーッ!!」「お助けーッ!」
信じられない事に、玉蜀黍の芯は鈍器として見事に役立ち、鬼たちを次々と倒していくのでした。
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戦いが終わると、玉蜀黍の芯は風に吹かれて散っていきました。彼の犠牲と貢献は、桃太郎とその家来たちの心に深く刻まれました。
桃太郎たちは鬼退治を成し遂げ、村に帰りますが、玉蜀黍のことを忘れることはありませんでした。彼の魂は、風に乗ってどこまでも広がっていったのです。(終)